蜷川幸雄様
わたしは、国際美術家集団「Artists Against Occupation/占領に反対する芸術家たち」のメンバーで、パレスチナによる呼びかけ、イスラエルに対する不買・脱資・制裁 (BDS) 運動を支持する、日本人美術家です。テルアヴィヴのカメリ劇場で「トロイアの女たち」を上演するとの、あなたの発表を報じるヘブライ語の記事を、英訳して送ってきたのは、やはり、イスラエルに対する不買・脱資・制裁 (BDS) 運動を支持する、イスラエル市民集団でした。わたしたち日本人が、政府による原発推進に反対し、悲痛な思いで、福島の人びと、ことさら子どもたちを汚染地域から避難させて欲しいと願うように、イスラエルにも、政府の民族浄化、占領、アパルトヘイト政策に反対し、国際的圧力が、犯罪を終わらせることを願う人びとがいます。その願いを受け入れ、イスラエル政府の支援を受けるこの「共同制作」を放棄するよう求めます。
イスラエルに対する不買・脱資・制裁 (BDS) 運動のネットワークは、イスラエルを含む世界中に巡らされています。イスラエルから届いたヘブライ語記事(英訳)によれば、あなたは世界各地での上演を望んでおられるようですが、イスラエルの犯罪を糊塗するあなたの計画が、ニッポンではともかく、世界市民に受け入れられることは考えがたく、いたるところで、ピケラインが設けられることでしょう。
アラビア語は、表向き、イスラエルの公用語となってはおりますが、公文書はヘブライ語のみで記され、アラビア語は意図的に、道路標識からさえ消されつつあり、右派政党を数多く抱えるネタニアフ政権では、声高に、アラビア語を公用語から外す議論がなされています。そのような状況下で、ヘブライ語とアラビア語、日本語の3言語による舞台に、どのような意味が付与できるというのでしょうか。深夜、ベッドから拉致され、虐待を伴う尋問で、覚えない投石を自白させられ、パレスチナの子どもたちが署名を強いられるのが、彼らに読むことのできないヘブライ語のみの「自白調書」です。
「トロイアの女たち」は、イーリオスがあったとされるトルコでの上演こそ相応しかったのではないでしょうか。不和の女神、エリスが投げ入れた林檎が、パリスならぬあなたの手から、イスラエルに手渡されるとして、この場合、林檎を投げ入れた不和の女神は、ニッポン政府、だったのでしょうか。
時間が経過するごとに、計画の変更は、困難の度合いを深めます。ですから、変更するなら早いに越したことはありません。イスラエル「内部からのボイコット」集団からの、1月27日、テルアヴィヴでの演奏が予定されている英国ミュージシャン、ジェイムス・ブレイクに宛てた公開書簡を添付すると共に、その最後の数行を繰り返します。
「弾圧される側に立ち、国際法に従い、平等、自由、帰還 - パレスチナ人の3つの基本的権利を尊重するまで、アパルトヘイト・イスラエルでの上演を拒絶してください」。
mizya
Artists Against Occupation
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親愛なるジェイムス・ブレイク、
わたしたちは、イスラエルに対する、パレスチナの不買・脱資・制裁 (BDS) 呼びかけを支持する、イスラエル市民集団です。わたしたちは、政府の民族浄化、占領、アパルトヘイト政策に反対し、国際的圧力が、これら犯罪を終わらせ、地域に平等で公正な社会を創出すると強く信じています。わたしたちは、したがって、1月27日に、テルアヴィヴで計画されるあなたのショーをキャンセルするようあなたに求めます。
イスラエル国は、パレスチナ人に、その権利と自由を拒絶します。二三の例に言及すると、西岸に住むパレスチナ人は、移動の自由を制限され、多くの場合、その農地にアクセスする権利さえ拒絶されます。彼らがイスラエルの政策に対し抗議を試みるなら、彼らは粗暴な扱いに直面します。彼らのガザ回廊(その56%は子どもたち)の近親者たちは、食糧、清潔な水、医療品や建設資材へのアクセスに対する厳しい制限を敷く、続く包囲の下に生きています。この国の野蛮は、あなたのパフォーマンスが予定される場所から、僅か1時間のところで起こっています。開催予定地から40分、東エルサレムの地区、シルワンで、子どもたちは、静まり返る夜、日常的にベッドから拉致され、その親や弁護士へのアクセスなしに、暴力的警察の尋問に連れて行かれます。
BDSの要請は、パレスチナ民衆の部門すべて:追放の難民、厳しい軍事占領下の人びと、そして、後にイスラエル国なった域内に留まった人びとを代表する、170以上の市民社会組織により発行され署名されました。この非暴力イニシアティヴは、かつてのアパルトヘイトに反対した南アフリカ生来の民衆の似通ったキャンペーンにより鼓舞されました。その前にあったものと異なり、しかしながら、パレスチナBDS運動は、イスラエル人個人を対象としません。それは代わりに、正常の外見を繕う公開イヴェントに、共謀する機関を標的とすると同様、焦点を当てると選択します。
イスラエルでのパフォーマンスにより、あなたは、ガザの包囲、人種覇権と系統的差別、そしてパレスチナ難民の継続的追放に基づく政権の残忍な軍事占領の促進と合法化に、その声を与えることになるでしょう。アーティストと有名人の多くが、パレスチナの文化的労働者の全コミュニティ殆どに支持されるイスラエルの文化的ボイコットを、今や、公的に支持しています。BDS支持表明を決めた人びとの中で著名なのは、ロジャー・ウォターズ、David R. Randall、マキシ・ジャズのフェイスレス、エルヴィス・コステロ、映画製作者、ケン・ローチとマイク・リー、著名な活動家、デズモンド・ツツ司教、そしてさらにたくさん。既にここでパフォーマンスしたことのある他の人びとも、彼らが再びそうすることはないだろうと宣言し、ここでパフォーマンスした彼らの選択に遺憾の意を表明しさえしましました。メイシー・グレイは述べました:「わたしは、現実を直視し、現在わたしが知る少しでも知っていたなら、わたしは明確にそこで演奏することはなかったと断言します」。
過ぐる月、多くのファンたち、活動家たちは、あなたに向け、この問題で多くのコメントが、あなたのFacebookとTwitterアカウントになされました。これらファンたちは、あなたが向かうのを控えた、そしてあなたの販売代理人たちが、削除するか無視すると決めた、多くのコメントを書きました。アパルトヘイトに青信号を送ることは、削除ボタンを押すことにより、消えることのない汚点です。親愛なるジェイムス、ピケラインは明白に示され、そしてわたしたちは今、どちら側にあなたは立つのか? あなたに決めるよう求めます。
弾圧される側に立ち、国際法に従い、平等、自由、帰還 - パレスチナ人の3つの基本的権利を尊重するまで、アパルトヘイト・イスラエルでの演奏を拒絶してください。
アーカイヴ:活動家たちがイスラエルをボイコットするよう英国ミュージシャンに求める(01月20日)
上記、蜷川幸雄氏宛の書簡は、彼のHPに記されていたメールアドレスに、1月20日、メールしたものだ。目に触れることなくジャンクメールボックスに収まる可能性も考えたし、返信メールを期待したわけでもないが、とりあえず返信を待つ仕草だけは表明した。時間はもはや充分だから、公開書簡とする。蜷川幸雄氏へのメールでは、わたしの氏名を入れたが、boycottil掲載にあたって、mizyaと表記した。現在は、イスラエルのBDS集団と共同で何をしようと相談しているところ、少なくても、国際的署名サイトだけはつくりたい。