2012年05月10日
米国バスケット・チームのメンバー - コービー・ブライアントとしよう - が、国際トーナメントに旅していただけで、外国政府により逮捕され、裁判も、彼が投獄された罪を聞かされることさえなく、3年間刑務所に捕らえられたと想像してください。コービーが家族や友人たちの訪問を認められなかったと想像してください。彼が、頼みとするものなく残され、ハンガーストライキを続けることで、彼自身の肉体的健康を終らせることにより、選手としてのいかなる将来の展望も事実上終ると、想像してください。見込みはわたしたちが気づくだろうこと、そうでしょう? 見込みは物語がスポーツ・センターを率い、世界中で新聞報道させるだろうこと。見込みは強力な国際的スポーツ組織すべて - IOC、FIFA - が、投獄する国をコービーが解放されるまで社会ののけ者として扱うだろうこと。そして見込みは、レイカー嫌いさえ「コービー解放」と書かれたバッジをつけるだろうこと。
これは、パレスチナ・ナショナル・サッカーチーム・メンバー、マフムード・サルサクに起こったことだ。ガザ回廊、ラファ出身のサルサクは、西岸でのナショナルチーム試合に行く途中、検問所で逮捕された。2009年7月だった。その日以来、25歳は、裁判もなく刑事告訴もないまま捕らえられてきた。彼の家族も友人たちも、彼との面会を許されてこなかった。イスラエル政府の目に、サルサクは、無期限に投獄され得る、というのも、彼らが彼を「違法戦闘員」と思うからだが、誰も - 家族も、友人たちも、コーチたちも - もうろうの最たる理由が判らない。今、サルサクは、その条件と市民的自由の欠如に抗議してハンガーストライキするパレスチナ囚1,500人以上のひとりだ。先週、ニューヨークタイムズが書いたように、「パレスチナ問題の最新のヒーローは、石を投げる、あるいは自動小銃を振り回す逞しい若者たちでない。彼らは、イスラエル刑務所の中で、自身を飢えさせる、手首に鎖され、やせ衰えたおとなたちだ」。
しかし、サルサクをメンバーと主張した、あるいは彼の解放のため激しい要求を発表した組織はなかった。わたしたちにあるすべては、どちらも彼の無期限拘留に当惑し途方に暮れる、家族とチームだけだ。彼の兄、イマンは、「わたしの家族は、マフムードがイスラエルにより投獄されるだろうとは想像だにしなかった。なぜ、本当になぜ?」。
その執念が政治でなくサッカーだった誰かが、どのように標的とされうるのか、そうした仕方で捕らえられるのか、彼の家族は理解しない。しかし、今日のイスラエル/パレスチナで、サッカーは政治である。サルサクは、イスラエル政府により、ハラスメントどころか死のために選び出された最新のパレスチナ選手に過ぎない。2009年、ナショナルチーム選手3人、アイマン・アルクルド、シャディ・スバーヘ、ワジェ・モシュタへが、ガザへの爆撃で殺された。パレスチナ・サッカー協会の事務所同様、国立競技場もまた、ガザ爆撃で標的とされ破壊された。加えて、2012年、そのゴールキーパー、オマル・アブルワイイスが、イスラエル警察により「テロリズム罪」で逮捕された。ナショナル・チームを貶めるなら、常にナショナル(国民・国家)があるとの考えを貶めることができる。
(略:長い、アーカイヴ記事参照)
全文:The Nation.
アーカイヴ:サッカー行動主義集団が投獄のパレスチナ人サッカー選手とすべてのハンガーストライカーに連帯(05月13日)
イマジネーションが欠落しているからこそ、わざわざ、米国NBA、ロサンゼルス・レイカーズのスター選手になぞらえるのだろう。ハンガーストライキするサルサクは、現在25歳、3年間投獄されてきたのだから、22歳から25歳まで、サッカーボールに触れることもピッチに立つこともできなかったことを意味する。ハンガーストライキする前から、サッカー選手としての将来の展望など既に残っていないと、サルサクは考えたに違いない。
どうしてひとは、イマジネーションをそれほどまでに欠落させたのだろう。イマジネーションを欠落させなければ、とても生きてはいけないほど、社会が過酷だからだろうか。東京電力の原発事故での福島の嘆き、原発など立地させるのでなかったとの後悔を、TVの画面で目にするにも拘らず、大飯では、原発から収入を得る1000人、2000人のために、原発再稼働を求める。事故になれば、原発から収入を得る1000人、2000人の被害、補助金を受ける大飯の被害に留まらない。50万人、100万人が、家を、土地を、生業を失うとき、大飯は彼らに何も補償できない。補助金漬けの大飯が、麻薬患者なら、政府は麻薬売人といったところだ。東北電力管内につくられた東京電力の原発基地となった福島に要求されるのは、放射能汚染物質の「中間貯蔵」だが、関西電力管内の大飯は、ひとたび事故が起こったなら、そのまま「最終処分場」となるだろう。それがイマジネーションというものだ。福島から東北にばらまいた東京電力の放射能汚染は、東京電力管内、関東圏が引き取るべきもの、最終処分場はもちろん、関東圏内につくられなければならない。それを拒絶するならその前に、原発を拒絶しなければならない。
イスラエルによるサルサク投獄を非難することなく、イスラエルを受け入れている欧州サッカー連盟(UEFA)、加盟国、パレスチナのナショナルチーム選手、サルサクの即時解放を要求できないアジアサッカー連盟(AFC)、イスラエル・サッカーの人種差別的フーリガンを見て見ぬ振りの国際サッカー連盟(FIFA)、揃いも揃って、サッカー自体を貶めている。それもまた、イマジネーションの欠落だ。
ラベル:ハンガーストライキ マフムード・サルサク